研究開発 Close Up

継続的進化を可能とするB5G IoT SoC及び
IoTソリューション構築プラットホームの研究開発

代表研究者 シャープ株式会社 常務執行役員CTO 兼 R&Dグループ長 兼 研究開発本部長 種谷元隆

研究機関 シャープ株式会社/シャープ福山セミコンダクター株式会社(~R3.10)/シャープセミコンダクターイノベーション株式会社(R3.11~)/国立大学法人東京大学/国立大学法人東京工業大学/日本無線株式会社

※この記事は、「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業の「機能実現型プログラム取材映像」を再編集したものです。

「国内に無線の技術を取り戻す」をミッションとして

「カスタマイズできるSoftware DefinedのSoC」を新しいインフラとして日本発のイノベーションを起こす。そんな壮大な目標の下に進められている本プロジェクトについて、代表研究者の種谷元隆氏と研究者の堀川豊史氏(シャープセミコンダクターイノベーション株式会社第二開発部部長)に話を聞いた。

種谷元隆氏

このプロジェクトはどのような目標がありますか。

種谷 今回のプロジェクトは「国内に無線の技術を取り戻す」という大きなミッションを感じながら進めています。独自の特徴である「カスタマイズ可能なSoftware DefinedのSoCを作る」ということ、それを社会実装して日本における新しいインフラであり2030年代の重要なチップとして位置付けることができるように、アウトプットを求めていくことが大きな目標であり、この「R&D(研究開発)の成果そのもの」であると感じています。

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どのような特徴がありますか。

種谷 大きくは2つの特徴があります。1つは、今回のSoC(System-on-a-Chip)は従来のSoCとは違って「中身を書き換えていける」ということです。普通LSIはみなさんに購入していただいたタイミングが最大の価値を持っているわけですが、今後は、LSIの中に書き換え可能な領域をしっかりと作ることで、通信のSoCそのものが、みなさんが使っていく中で価値が拡大していくことを仕組みとして取り入れていくことを考えています。

もう1つは、これをすることで、新しいアイデアを通信の世界で持っておられる、大学の教授や学生、スタートアップ企業から大企業までが、われわれが作ったプラットホームを用いて比較的物理レイヤーに近い通信から、アプリケーションに近い通信の領域まで新しいアイデアを試していけること。これによって「日本発の標準化」または「技術提案を世界に向けていくためのプラットホームとしても使っていただける」ことです。

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堀川豊史氏

どのような課題があり、それらをどのように解決していきますか。

堀川 現状で、通信デバイスの要となるチップセットは海外大手ベンダー製が多く、そこから提供されたデバイスを使いこなすしかない状態です。「より長く使えるアーキテクチャ」、つまり「機能のアップデートが実現できている」ということについてですが、必要最小限の構成で「より広いニーズを満たすデバイスを提供できるか」が重要です。

本研究では、これらの課題を解決するために、1からハードウェアとソフトウェアを見直し、新しい通信機器の開発プラットホームを実現します。また併せて、CMOSのミリ波対応で、コストダウンや小型化を図る研究開発を行っていきます。

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プロジェクトの成果からどのようなことが期待できますか。

堀川 次世代の通信において、基本となる開発プラットホームを広く提供することは大変有意義だと考えています。スマートフォン開発に代表される無線機器開発に精通したメーカーだけでなく、一般の開発者にも研究成果であるプラットホームを提供し、さまざまなシチュエーションでそれに合った通信要件でネットワークを構築でき、これによりIoT通信の世界を広げることができると考えています。

これまでを振り返ると、新しい商品や新しいサービスが登場するときは必ず新しい発想のデバイスが開発されています。われわれは「Beyond 5G」時代の通信においても、イノベーションを起こしたいと考えています。

ありがとうございました。

種谷元隆氏
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堀川豊史氏
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コラム
【B5Gの社会】製造業界はこう変わる!

業界の課題

機械は人の生活活動、ものの生産と流通、社会インフラ、エネルギー利用などにわたる基盤であり、さまざまな改善による性能、効率、信頼性の向上とともに、センサーの進化やICTの活用によるシステムの最適化が進んでいます。この業界には、労働人口の減少を補う自動化や省人化、人間と協調するロボット、あらゆる段階での環境負荷の低減などの課題があります。

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求められる将来像、期待されるソリューション

これらの課題を踏まえ、各分野で次のような将来像が求められています。
・工作機械:ICTを活用した加工の高精度化・高速化、メンテナンスの効率化、材料・条件などの対応範囲の拡大
・建設機械:建機にとどまらない建設工事の生産性・安全性の向上
・農業機械:農機の自動化、高機能化にとどまらない農業生産のあらゆる面でのスマート化の実現

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課題解決を実現可能にするBeyond 5Gの技術

Beyond 5G には次のようなことが期待されています。
①XR(クロスリアリティ=現実世界と仮想世界を融合する技術)等を用いたインタラクティブなやり取りによる高精度の機械遠隔操作、海中や宇宙での活動、感覚共有
②機械と人、または機械同士の高精細映像を中心としたリアルタイム情報共有
③人間の機能・行動を担うロボットやアバター
④多種多様なセンサーからのデータを活用した工場の製造工程自動生成と、それによりコンパクト生産やカスタマイズに対応するスマート工場
⑤収集したデータに基づく性能向上や工作工程の知能化、大規模センサーネットワーク活用、超高速低遅延のモーションコントロール等を実現した工作機械
⑥省人化・無人化の促進、誰でも安全安心なリモート操作、空間的・時間的に柔軟な施工管理等を実現する建設機械
⑦農機の自動化・高機能化にとどまらず遠隔農業や出荷計画を含む農業生産をスマート化する農業機械

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