研究開発 Close Up

Beyond 5G 超大容量無線通信を支える
空間多重光ネットワーク・ノード技術の研究開発

代表研究者 国立大学法人香川大学 創造工学部教授 博士(工学) IEEEフェロー IEICEフェロー 神野正彦
研究機関 国立大学法人香川大学/株式会社KDDI総合研究所/日本電気株式会社/santec AOC株式会社/古河電気工業株式会社

※この記事は、「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業の「機能実現型プログラム取材映像」を再編集したものです。

「PHUJIN(風神)」のようにデータフローを自在に操りたい!

Beyond 5G時代のICT社会を支える超大容量光ネットワークを経済的に実現するには、空間分割多重(SDM)技術をリンクだけでなく、ノードにも導入することが鍵となる。本研究開発で、超大容量かつ経済的な光ネットワークを実現すべく、SDM技術を駆使した光ネットワーク・ノード技術の確立をめざす研究チームの代表、神野正彦氏に聞く。

神野正彦先生

研究の概要・特徴を教えてください。

神野 私たちの研究プロジェクトは、超大容量性と経済性を両立させることが可能な空間多重光ネットワーク技術を開拓することを目的としています。
「Beyond 5G」というとワイヤレスやモバイル技術をイメージするので「なぜ光ネットワークなのか?」と疑問に思われるかもしれません。しかし、実際にはスマートフォンの電波が基地局に届くと、その先の99%以上は世界中に張り巡らされた光ファイバーケーブルを利用してデータは伝送されているのです。このようなことから、空間多重光ネットワーク技術を開拓することは、Beyond 5Gを実現する上でたいへん意義のあることと捉えています。

研究概要

目標を達成するためには、何が鍵になるのでしょうか。

神野 「Beyond 5G」が、現状の通信の10倍の高速化、10倍の多地点接続を目指すとすれば、これをエンドツーエンドで実現するためには、10倍、100倍の容量の光ネットワークを経済的に構築するための技術開発が必要不可欠です。そのための鍵となるのが、光の波長単位だけではなく「光ファイバーのコア単位でルーティングする」というアイデアです。
本研究開発を受託している5者は、ファイバーベンダー、モジュールベンダー、装置ベンダー、通信事業者、そして大学からなるチームであり、独自のファイバー技術、光接続技術、光スイッチ技術、光ノード技術、光増幅技術を垂直統合的に組み合わせて、超大容量かつ経済的な光ネットワークの実現技術を開拓していきます。

参考写真1

プロジェクト名を「PHUJIN(風神)プロジェクト」とされていますが、どのような思いをこめられているのでしょうか。

神野 風をつかさどる神「風神」が空気の流れを自在に操るとされていることにあやかって、私たちも「Beyond 5G」通信サービスが発生する膨大なデータフローについて、「光を使って自由自在に転送できるようなテクノロジーを開拓したい」という思いを込めて名付けました。

現在の進捗状況はいかがですか。また、今後はどのように進展させていく予定でしょうか。

神野 動く試作システムを早期に作り、課題を洗い出していこうと、プロジェクト2年目に早くもこのようなテストベッドを構築して実証実験を行っています。このようなスピード感ある研究開発によって世界をリードする成果を築いていきたいと思っています。

参考写真2

ありがとうございました。

神野正彦先生
研究概要
参考写真1
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コラム
【B5Gの社会】建設・不動産業界はこう変わる!

業界の課題

建設業では就業者数の減少や就業者の高齢化が見られ、将来的な担い手の確保が課題となっています。また、近年、自然災害が激しく、多くなる傾向であることから、防災・減災、インフラ老朽化対策等の国土の強靭化や社会資本の戦略的な整備を進めていくことが欠かせません。
不動産業では、就業者の高齢化が進むなか、人口減少、遊休不動産の増加、不動産の老朽化等への対応のほか、安全安心な不動産取引の実現、ストック型社会の実現等が課題です。

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求められる将来像、期待されるソリューション

建設業では、無人化施工技術の現場実証や、現場作業員を支援する技術、映像データを活用した監督検査の省力化などの取組みが期待されています。特に生産性を向上させるためにも、「高速大容量」、「多接続」、「低遅延」の特性を持つ 5G システムを活用した無人化施工等が有効な手段だと考えられます。
不動産業でも、AI 、 IoT 等の新技術の活用により、効率性、利便性向上を図ることを目指しています。

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課題解決を実現可能にするBeyond 5Gの技術

この分野でBeyond 5G を活かす事例として次のようなことが考えられます。
①遠隔施工VR技術を利用した施工・建設での熟練技術者と現場作業者の遠隔協業、遠隔施工や、ハプティクス技術や VR 技術を利用したロボット遠隔操作
②あらゆる建設部材をIoT化したインフラ、建築物、不動産の保守管理
③振動・温度・湿度・ガス等のセンサーを付けた無線センシングによる常時監視や予防保全
④サイバー空間上での設計処理、自動建設機械やロボットによる機材運搬・自動施工
⑤不動産取引における安全なデジタル決済、デジタルツインによる不動産管理・取引の効率化、AIによる投資助言、VRによるオンライン不動産内見

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Beyond 5G には、 5G を上回る超低遅延、超高速・大容量、超安全・信頼性、および超低消費電力、さらに、高精度な測位・センシングおよび時刻同期精度が期待できます。

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