研究開発 Close Up
Beyond 5G 超大容量無線通信を支える
次世代エッジクラウドコンピューティング基盤の研究開発
Beyond 5Gに向けた革新的高速大容量データ転送ハードウェア開発と高機能エッジクラウド情報処理基盤の研究開発
代表研究者 東京工業大学 科学技術創成研究院 面発光レーザフォトニクス研究ユニット 未来産業技術研究所 ユニット長 特任教授/名誉教授 博士(工学) 小山二三夫
研究機関 国立大学法人東京工業大学/国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学/公立大学法人滋賀県立大学/富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社/古河電気工業株式会社/古河ネットワークソリューション株式会社/日本電気株式会社/国立大学法人大阪大学/国立大学法人東北大学/楽天モバイル株式会社
※この記事は、「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業の「機能実現型プログラム取材映像」を再編集したものです。
「超スマート社会」の推進をめざして
政府が推進する「超スマート社会(Society5.0)」の推進に欠かせないのが、サイバー空間とフィジカル空間を融合させる技術だ。その実現をめざして産学の連携の下に実証研究までをも含むプロジェクトを進めている研究チームの代表、小山二三夫氏に聞く。
研究の目的と特徴を教えてください。
小山 現在内閣府が「超スマート社会」、いわゆる「Society5.0」を推進しています。それを実現するためには、サイバー空間と現実社会のフィジカル空間を融合させる技術が必要になってきます。そのためには、大量の情報を高速に繋ぐ「情報伝送技術」、またサイバー空間で高速に情報を処理する「情報処理基盤技術」が必要です。
今回のわれわれのプロジェクトでは、これまでにない新しいハードウェア技術で高速の情報伝送を行う、あるいは端末に近いところで高機能な情報処理を行うハード技術を開発し、かつハードウェアだけではなく、ハードウェアをベースにし、ネットワークを分割(スライス)して多様なニーズや用途に応じたサービスに対応するもの、あるいは新しいコンピューティング技術として「CPUやGPU」あるいは「メモリやストレージ」をグルーピングして「非常にリソース効率の高い、新しいコンピューティング技術を開発する」ことです。さらに、自動運転であるとか、「Beyond 5G」に適合した新しいアプリケーションを開発する、そういう実証研究まで含んだ「非常に広範囲なプロジェクトを推進する」というのがわれわれのプロジェクトの特徴です。
プロジェクトはどのような体制で進められていますか。
小山 今回のプロジェクトでは「生み出した成果を実社会に送り出す」ところまで“攻めたい”という思いです。われわれのプロジェクトでは12の研究チーム、研究者でいうと50名ほど、大学ではさらに大学院の学生諸君も関わるので、さらに数倍規模の研究者がこのプロジェクトに関わっています。
プロジェクトの成果からどのようなことが期待できますか。
小山 「超スマート社会」は、わが国が直面するいろいろな課題、例えば「少子高齢化」であるとか「健康、安全、防災」、あるいは「セキュリティ」、「エネルギー問題」、「農業問題」などを解決できる可能性があります。今回われわれのプロジェクトで生み出した新しいハードウェア技術、あるいは情報処理基盤のソフトウェア技術、アプリケーションまで含めたそういう技術を、ぜひ「『超スマート社会』推進に役立てたい」と考えています。
ありがとうございました。
コラム
【B5Gの社会】医療業界はこう変わる!
業界の課題
医療業界には、進展する超高齢化社会といかに共生していくかという課題があります。日本は社会課題解決先進国として世界への課題解決を展開することが期待されています。また、新型コロナウイルス感染症のような未知の疾患への対応も課題のひとつです。生活・医療・経済への影響を抑え、迅速な対応や解決をしていかなければなりません。医薬品や医療機器開発テクノロジーをどのように発展させていくかという課題については、世界的に研究開発が加速する中で、日本が最高水準の医療技術を実現し牽引することが期待されています。
求められる将来像、期待されるソリューション
これらの課題を踏まえ、次のような将来像が求められています。
・加齢によって衰えた身体機能・能力の補助・再現
・未知の感染症の発生時に即座に対応し早期解決を図る
・ビッグデータの構築とAIの精度向上等による最先端の医療技術開発
・医療の地域的偏在の解消や医療のシステム化と効率化を図り超高齢化社会に対応する
・病気の早期発見や未病対策、施術リスク低減による健康寿命の延伸
課題解決を実現可能にするBeyond 5Gの技術
期待される将来像に対応して、Beyond 5G には次のようなことが期待されています。
①知覚機能の補助と再現
②接触機会の低減と感染状況の把握、健康管理
③ゲノム解析のデータベース化
④遠隔施術
⑤低侵襲治療と患部直接治療
遠隔施術に関しては、数十Gbps超のスループットでの高精細映像伝送、超安全・信頼性の操作情報伝送が要求されます。また、低侵襲治療・患部直接治療については、数百万〜数千万個/km2のデバイスの超多数同時接続、ゼロタッチでの機器の自律的な連携が求められます。